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上映レポート

  • 監督特集プラス2『サマーフィーリング』3月18日

    「福間健二監督特集プラス2」6日目は、ミカエル・アース監督の『サマーフィーリング』を上映しました。

    なんと今日の観客に、『パラダイス・ロスト』主演の和田光沙さんもいました!
    せっかくだからと、劇場に貼られたポスターの前で福間監督とのツーショットです。

    上映後の福間監督によるトークは、とても示唆にあふれる、内容の濃いものでした。

    「『パラダイス・ロスト』完成直後にこの作品を見ました。三十歳前後のひとりの人間が突然亡くなる。残された者がどう生きるのか。しかも、夏。『パラダイス・ロスト』と共通したものが多くて、びっくりしました。ほんとうに好きな作品で、語りだしたら止まらなくなりそうだけど、その一方で、自分の感じたこと、学んだこと、人に言わずに秘密にしておきたいという気持ちもあるほど。できるだけ簡潔にいくつかのことを話します」。

    ミカエル・アース監督の、空間の見せ方のすばらしさ。ひとつには、それはカットのつなぎ方によるものです。人物ひとりを追うときは、カットとカットのあいだが飛んでいることが多い。でも、たとえば会話のシーンなどで人物が二人になると、それができない。そこに二人の関係の密接さが出る、というようになっている。

    アンデルシュ・ダニエルセン・リーの演じるロレンス。その「受け」の演技。ずっと「受け」という感じなんだけど、二回、はっきり能動的に動くところがある。まず、前半でゾエ(ジュディット・シュムラ)に「助けてくれ」と言うところ。「助けてくれ」と言いたかったのはゾエの方だったかもしれない。それから、後半でイーダ(ドニア・シショフ)にキスするところ。キスしたかったのはイーダもおなじ。そういうふうに相互性があるところで、そうなる。そこにいまを生きる「新しい男性」が見えてくる。

    自分がそうだからそう思うのかもしれないけど、ロックミュージックの好きなミカエル・アース監督、ドキュメンタリー的な撮り方も好きなのだと思う。それを、ニューヨークに場面が移るまでは、おさえ気味にして、ニューヨークで一気に出した。前半は、できるだけ我慢して、たんたんと進む。その我慢が効いている。

    「人生とは悲しいものではなく、どんなに暗闇に閉ざされた時であっても、人生とはなんとも曖昧かつ複雑で、キラキラしたものでできている」というアース監督自身の言葉にある「キラキラしたもの」が、ニューヨークで待っていた。ロレンスにも解き放たれる感じのことがおこる。そうなっている。そこへ向かっていくので、場所が変わるたびにさらにおもしろくなる、という構成が成立している。

    そんなふうに語った福間監督は、「監督特集プラス2」でこの作品を観客のみなさんと一緒に見ることができたことへの感謝の言葉のあとに、「どうして『ザ・フューチャー』と『サマーフィーリング』を上映したのかというと、単純な理由です。ぼくの好きな二つの映画を好きな人に、ぼくの映画を見てもらいたいからです。明日の『秋の理由』とあさってからの『パラダイス・ロスト』、ぜひ見てください」と、しめくくりました。

    連日盛況のつづいた今回の特集上映。19日はいよいよ最後の『秋の理由』です。上映後のトークは、出演の佐野和宏監督と福間監督。まだ見ていない人も、すでに見ている人も、どうぞ立ち会ってください!
    (宣伝スタッフ 吉祥寺の娘)

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