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上映レポート

  • 京阪神三都上映レポート 3

    シネ・ヌーヴォをあとにして、松村さんと三人で神戸/元町映画館へ。九条からは阪神電車・尼崎乗り換えで40分で行けるんです。京都四条から1時間で九条、九条から40分で神戸元町、いやー、京阪神は近い! どこの映画館にも行ける! 

    元町映画館は前作『秋の理由』でもお世話になった劇場です。監督は二度目ですが、わたしは初めて。神戸元町といえば、モダンでおしゃれなイメージですが、この商店街は気取りのない下町的な空気が流れています。それに馴染むように元町映画館がありました。間口は決して広くはないけれど、所狭しとポスターが貼りだされて、チラシが抜き取りやすいように置かれています。通りを行く人たちが、ポスターを眺めながらチラシを選んでいます。うれしい光景です。スタッフの皆さんが笑顔で迎えてくれました!
    15時20分の上映開始が近づくと、劇場のまわりがにぎやかになってきました。福間映画をいつも見てくれているなつかしい人たちもいます。ありがたいですね。

    上映中に、近くにある「1003」(センサン)という書店に行きました。ここは縁あって室野井洋子さんの遺稿集『ダンサーは消える』を刊行後すぐに置いてもらい、たくさん売っていただいてきました。今回、室野井さんが映像で「出演」した『パラダイス・ロスト』が元町映画館で公開ということで、三たび注文をいただいたのです。初めて訪ねる機会を得て、お礼に伺いました。想像どおり、店主の奥村さんの選んだ本たちがすこやかに並ぶすてきな書店でした。メールだけのやりとりだった2年近くを経て、実際にお会いできたのは幸福なことでした。

    さて、元町映画館、上映後の監督舞台挨拶です。今日は見にきてくださっているラジオ関西「シネマキネマ」の吉野大地さんにもご登壇いただきました。吉野さんとは、2013年の神戸映画資料館での『あるいは佐々木ユキ』公開と特集上映のときに取材を受けて以来のおつきあいで、『秋の理由』も『パラダイス・ロスト』も取りあげていただきました。福間映画を熟知している吉野さんの質問は鋭いです。いきなりゴダールから入りました!
    吉野さん「福間さんの作品にはゴダール色があるけれど、ゴダールでない福間映画とは?」。
    福間「ゴダールにはこの地上に存在しているものへの愛がない、僕の作品には愛がある」。
    吉野さん、小声で「ゴダールにも愛はあると思いますが⋯⋯」と。
    吉野さん「福間映画の言葉は日常的な話し言葉ではない、しかしそれが劇中で違和感がない。それは?」。
    福間「普通の言葉にたよりすぎない、たよりたくない。映像はこの世界が撮れる、映画的真実、ですよね。言葉、つまり文学や演劇に対しても映画的真実を持ってきたいと思っている」。
    吉野さんは次々に質問し、福間監督も迅速に応えて、客席ではうなずく姿がたくさん見えました。熱い拍手をいただいて終了。吉野さん、ありがとうございました!

    そして、近所の中華料理の店で打ち上げ。スタッフのいしだりょうさんも参加して、撮影裏話から、兵庫県の音楽シーンと本篇の音楽メノウのことまで話題は尽きず、おいしい料理もお酒もすすみました!

    翌7月5日は、ふたたびシネ・ヌーヴォで、『パラダイス・ロスト』上映後と、続く特集の『急にたどりついてしまう』上映前に監督挨拶をしました。そして、このたびの「京阪神挨拶ツアー」を終えて東京に戻りました。

    福間映画の旧作から新作までの6本の上映が、京都、大阪、神戸で同時期に開催されるという、願ってもかなわなかったことが、この困難な時期に実現されました。映画の作り手にとって上映の場を与えてもらえることは、何よりも大事なことです。コロナで世界が大きく変わっていくことは避けられないでしょうが、映画館で映画に向き合うことの意味は決して失われるものではないと信じています。
    全国のミニシアターが窮地に追い込まれるなか、予想をはるかに越える人がその危機に対して協力を惜しまなかったように、世界は変わっても変わらない真実はある、そう思いました。しかしながら、まだまだきびしい状況は続きます。
    それでも映画をつくり、映画館はそれを受け入れてくれる。そして映画を見に来てくれる人がいる。この信頼を、このたびの「ツアー」はあらためて教えてくれた気がします。
    出町座とシネ・ヌーヴォと元町映画館のみなさんと、福間映画を見てくださったすべての方に、心から感謝します。ありがとうございました!

    シネ・ヌーヴォでの特集上映は7月17日で終了しますが、新作『パラダイス・ロスト』は、7月31日まで続映されます。ぜひ福間健二監督の世界を体験してください。

    7月17日(金)特集最終日
    『わたしたちの夏』13:00
    『あるいは佐々木ユキ』15:00

    『パラダイス・ロスト』
    7月18日(土)〜24日(金)20:00
    7月25日(土)〜31日(金)17:35

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