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上映レポート

  • 京阪神三都上映レポート 1

    『パラダイス・ロスト』公開記念「福間健二監督特集 京阪神三都編」は、まず京都/出町座で6月19日からスタートしました。その翌週6月27日からは大阪/シネ・ヌーヴォと神戸/元町映画館でも始まりました。そして『パラダイス・ロスト』は、7月3日、4日から3館で公開されます。
    特集上映の間、県外移動が可能かどうか、東京で様子を見ながら、出町座での熱い反応に、心はすでに西へ行っていました。

    7月3日金曜日、京阪出町柳の駅に着くと外は大雨になっていました。急ぎ足で橋を二つ渡り、正面に見えてきた「出町桝形商店街」に入って傘をたたむと、そこは七夕の短冊が流れ星のようにキラキラ輝いています。思わず声が出ました。そして左角に、めざす出町座はありました。
    商店街のなかにある映画館。かつての、庶民の映画館を思い出すようなたたずまいで、見上げればヤクザ映画の描き看板が! そうです、深作欣二監督生誕90年で、出町座では深作作品上映中なのです。その下には、『パラダイス・ロスト』はもちろん、上映中の作品のポスターと、チラシの棚。商店街を行く人たちが立ち止まり、チラシを持っていきます。こんな映画館がいまも京都にある。そこで福間作品を上映している。そのことだけでもう胸が熱くなりました。

    中に入ると、中央のキッチンを囲むようにカフェスペースがあり、その背後の壁はすべて書棚になっていて書店。この1階スペースが「出町座のソコ」と名づけられたブックカフェなのでした。出町座は、時代を越えた文化の拠点、ともいうべき場所なのでした。福間映画初めての出町座、支配人の田中誠一さんとスタッフのみなさんにご挨拶しました。そして、特集と『パラダイス・ロスト』への気配りあふれる展示に見入りました。そうこうしていると、関西の宣伝をお願いしている松村厚さんも来場して再会。松村さんは元第七藝術劇場の支配人、福間映画は『岡山の娘』から『秋の理由』までお世話になったのです。

    さて、出町座『パラダイス・ロスト』初日の上映時間が迫ってきました。大雨で心配でしたが、次々にお客さまが入場しています。なつかしい「ろくでなし」の横ちゃんも来てくれています!
    そして、上映終了の20時40分、福間監督は舞台挨拶に立ちました。
    まず、コロナ禍でさらに今日の大雨のなか、きてくださったたくさんのお客様に、そしてこのたびの京阪神3館での特集上映から新作へという上映に対して出町座のみなさんに、感謝を伝えました。
    「この困難な時期にあって、『パラダイス・ロスト』を世の中に出すことが運命的だったのではないかと思います。出来上がって上映しながら、自分も教えられたのは、夫に突然死なれた主人公の亜矢子が、〈大丈夫じゃないけど、生きていく〉と言うところ。これは脚本にはあったけど、和田光沙さんが迷いを振り切るように言ってくれた。この言葉こそがこの映画の根底にある、そんな気がします」と福間監督。
    熱い拍手を受けて、短いけれど核心をついた挨拶を終えました。

    パンフレットや詩集を買ってくださる方から、それぞれの感想やこの映画を見るに至った経緯などを聞きながら、福間監督は終始ニコニコ顔。出町座で特集の過去5作すべてに通ってくれた人、かつて見てもう一度見てくれた人たちもまた『パラダイス・ロスト』を見てくれたのでした。いい出会いがありました。
    この夜はもちろん打ち上げ、そして「ろくでなし」へ。雨の降りつづく京都は深夜になっていました。

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