Reports / Kenji Fukuma's Page

福間健二のページ

  • 『パラダイス・ロスト』クランクアップまで 01

    〔ノート〕
    『パラダイス・ロスト』の企画のはじまりから撮影に入ってクランクアップとなるまでの約5か月の記録である(文責 tough mama)。そこからのポストプロダクションに長くかかるのはいつものことだが、今回はとくに時間を要した。それについても記録を残すべきかとも思うけれど、いまはその用意がない。大変だったが、いくつもの「発見」があった。2019年8月の初号試写、さらに10月に英語字幕版を作ったときまで、そうか、そういうことなのかと、作品に教えられることがあった。自分で監督しておいてなんだと言われるかもしれないが、そういう「発見」はこのあともつづくと思っている。

    福間健二監督第5作『秋の理由』のあと、北海道の十勝地方で撮る作品の企画が持ち上がった。有機農家の若い夫婦と彼らのまわりに生きる人々の物語を構想し「天使の生きる場所」というタイトルで準備を進めた。2017年、ダンサーの室野井洋子さんが亡くなった夏のことである。

    その夏、福間健二は吉祥寺美術学院のサンデーワークショップに招かれて「詩と映画のいま」という話をした。美術をめざす若い生徒たちは映画にも造詣が深く、受験生の枠を越えて彼らの自由な感性を育てる先生のまなざしに感動。「吉美」との刺激的なつきあいが始まる。

    十勝地方の人々とのつながりもできて、中心となるスタッフ・キャストも決まった。吉美の生徒たちに撮影の応援もお願いした。北海道の夏を撮ることへの夢がふくらんだ。和田光沙さん、そして小原早織さんに出演のOKをもらった。「佐々木ユキ」はその後農業をめざしたと構想したのである。

    2018年2月、シナリオ完成。これでいける、そう思った。ところが、抱えていた諸問題が一気に噴きだしてきた。映画製作にはよくあることだが、この企画は中止に追い込まれた。3年越しで準備した企画の中止。心底こたえた。そのころ、アクショニストの首くくり栲象さんが亡くなった。敬愛する人だった。

  • >> 記事一覧へ