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福間健二のページ

  • 『パラダイス・ロスト』クランクアップまで 03

    6月後半からキャストの交渉と面談。川村講平に『秋の理由』から続投の木村文洋監督。美大受験生の翔には実人生そのまま、吉美生の我妻天湖くん。この世をさすらう人ヒラカズ先生に森羅万象さん。その友人の不思議な人物亀田くんに宇野祥平さんが決まった。

    音楽はもう福間監督のなかで決まっていた。第一稿を書き進めながら、ずっと流していたメノウというバンド。札幌で活躍する、ハヤシヒロトv/g+犬養康太b+高橋幾郎dのアナーキーな三人組。ハヤシヒロトと福間健二は、三年前に国立で、ギターと朗読のライヴをやっていたのだ。

    さて、助監督である。すでに監督として傑作を生んでいる女池充監督。事情あってしばらく休業中の彼に依頼するのは心苦しかったが、藁をもすがる思いが届いた。1995年『急にたどりついてしまう』の助監督であった。その年の彼の結婚式で福間監督と福間恵子は「仲人」をつとめた!

    吉祥寺美術学院には、キャスト、スタッフ、美術に加えて、ロケ場所もお願いした。吉美と吉美に集う若い人の存在なくして、『パラロス』は成立しなかった。スチールも、吉美生の勝野斗太くんと現武蔵美生の内田左京くん。二人には出演もしてもらっている。

    7月、やっと第一稿があがる。冒頭、木下夕爾の詩が置かれている。
     
      僕はまもなく死ぬだろう
      僕は完全な無機物になるだろう
      僕は今まで持たなかった自由を持つだろう

      僕は視る 僕を燃やす焔の色で
      僕は語る 僕を燃やす風の音で 
      そうして僕は 

    木下夕爾の詩を読む「僕」は山口慎也。亜矢子の夫。ネットで売る古本屋をやっていたが、心臓発作で倒れて突然死ぬ。なかなか役者が決まらなかったが、やっと出会えた。役者歴も豊富な江藤修平さん、37歳。若く見える。穏やかな風貌の奥に秘めた意欲を見た。声もいい。

    続いて慎也と翔の母、パンク歌手の信代。福間監督もファンで、90年代ピンク映画をささえた佐々木ユメカさん。OKをもらえた。信代の夫でミュージシャンのハルオ、翔の父。ハッと浮かんだのはミュージシャンのスズキジュンゾさん。春にライヴを見て以来、気になっていた人だ。話を聞けば映画に詳しい。即決!

    7月、猛暑到来。怪人物太田に『急にたどりついてしまう』で伊藤猛の父を演じた岡田潔さん、森の怪物にフラメンコダンサーのグラシアス小林さんが決まる。全員にシナリオ第一稿を送付し、8月のスケジュールを確認。スキップ映画祭で『岬の兄妹』の和田光沙さんを見て、彼女の「底力」に唸る。

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