Reports / Kenji Fukuma's Page

福間健二のページ

  • 『パラダイス・ロスト』に出てくる詩 03

    *福間健二作品 全篇が出てくるもの (2)

    九月の自分

    閉ざされた扉
    つまり
    物語を
    語りつくした世界
    それを通路にするには
    花が枯れてしまった木の
    葉の動き
    風を見るのだ。
    心が
    心にむかって
    揺れる
    九月
    遠いさざ波を思って
    歩いていると
    人の家の塀に
    「人類の恩人になりなさい!」
    という貼り紙
    こういうコピー全部燃やしたら
    何が消えて
    何が生まれるか。
    方法はわからなくても
    たたかう理由
    ゼロからはじまる自分に
    会いに行く。

    〔ノート〕
    終盤にむかって、亜矢子の絵ができあがり、講平が書きあげたシナリオ「パラダイス・ロスト」を印刷し、それを亜矢子と翔に読んでもらうまでのシークエンスに亜矢子の声で流れる。詩集『会いたい人』(2016)に所収。
    なお、宣伝チラシには「遠いさざ波を思って/歩いていると人の家の塀に/「人類の恩人になりなさい!」/という貼り紙/こういうコピー全部燃やしたら」の部分を抜いた短縮版が載っている。

  • >> 記事一覧へ