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福間健二のページ

  • 『パラダイス・ロスト』クランクアップまで 02

    首くくりさんの死の直後から、福間健二は「パラダイス・ロスト」というツイッター詩を書きはじめた。

      手持ちぶさたでつかんでいた。
      地面に立つ、何のためかわからないポール。
      一晩で時代が変わり、
      親切な道案内がそれに取りつけられた。
      そうだったのかとダンスでもすれば⋯⋯

    北海道企画のために8月を空けてもらっていた主要スタッフ・キャスト。時期をずらして全員を再編成するのはきびしい。ならば台本を生かして東京近郊で農業を撮るか。いや、一から始めるにはあまりにも時間がない。混迷する4月。悩む心に、わが町の夕陽がまぶしかった。

    5月、人に会い、猛然と映画を見た。『菊とギロチン』試写を見て、奮起した。和田光沙さんの叔父さん郷津晴彦さんの個展で「平和な小国の住人たち」に初めて会った。主のいない庭劇場での首くくりさんのお別れ会に参加。福間恵子は、室野井さんの遺稿集『ダンサーは消える』の編集に追われていた。

    6月2日、『パラダイス・ロスト』のプロットができあがる。八百屋で働く山口亜矢子(30)、農業をやりたいユキ(28)、自主映画の監督川村講平(32)、ネットの古本屋山口慎也(32)、慎也の異父弟で美大受験生の翔(20)。主な人物構成は決まった。役者のイメージも固まった。ここから再出発だ!

    東京の8月は猛暑・セミ・蚊との闘い。だが、もう後戻りはしない。中心となるスタッフ・キャストに再確認して撮影を決定。プロットがふくらみ、すこしずつ脚本らしくなっていく。福間健二の頭の中では、原民喜の短篇「心願の国」と木下夕爾の詩「死の歌」の言葉が踊りだしていた。

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