Reports / Kenji Fukuma's Page

上映レポート

  • 福間健二展 at 札幌・ギャラリー犬養

    札幌初の福間作品上映に先がけて「福間健二展」をしよう、そう提案してくれたのは、上映会主催のReguReguのお二人、小磯卓也さんとカヨさんでした。それは去年の夏のこと。
    萩原朔太郎賞を受賞した際に開催された展覧会のカタログを挨拶がわりに送ったら、そのアイディアを思いついてくれたのです。そもそもReguReguは、パペット制作+アニメーション映像+音楽の作品を二人で制作し発表している美術ユニットで、その幻想世界は根強いファンに支持されています。そして毎年年末には新作の展覧会をギャラリー犬養で行なっています。つまり、彼らはアーティストであり、展示の場を持ち、さらにギャラリー犬養は、メノウのメンバーである犬養康太さん経営の場なのです。ぜひお願いしますと即答したのが福間健二展の始まりでした。
    上映会元々の予定の1月のために準備してきたので、構想は一年近くに及びました。
    その結果が、来場者すべてを感嘆させるほどの展示になったのです!

    福間健二展の会期は4月21日から5月10日まででしたが、結果的には5日間延長して5月15日まででした。5月7日に札幌に飛べるフライトが確定してすぐに、7日にギャラリーで、ドラムの高橋幾郎さんとの朗読ライヴをすることも決まりました。
    5月7日(金)が、札幌の最高気温が23度になる予報を受けて、急きょギャラリーの庭で行なうことに。そこは2017年に亡くなった室野井洋子さんの最後の公演が行なわれた庭です。福間健二は当日17時に新千歳空港に着いて、豊平区にあるギャラリー犬養に直行。福間健二展をちゃんと見る余裕もなく、簡単なリハーサルののち、19時半からのライヴに挑みました。
    初めての高橋幾郎さんとのセッション。こんな機会をつくってくれたのも、福間健二展のおかげ。1週間前に告知できたのですが、定員20人を越える人たちが集まってくれました。今夜のギャラリーの庭は、ライトを受けた樹々の初々しい葉っぱと、闇に溶けこむ人間の姿が幻想的な「舞台」です。
    さすがに夜の札幌は冷えてきました。しずかに地に届くドラムの音と庭に響く声は、風の音とあいまって、ドラマチックで幻想的。客席も緊張と熱気を帯びてきます。どこかこの世ではない空間にいるような感じ。室野井さんもそっと舞い降りて聴いていたにちがいありません。余韻を残す40分のライヴは、大拍手をうけて、アンコール。最後の一篇は、詩集『急にたどりついてしまう』から「トラブル」を読みました。
    札幌が生みだしてくれたこの刺激的な朗読ライヴは、これからも語りつがれていくことでしょう。

    5月9日の上映会の翌日、ギャラリー犬養に在廊した福間健二は、そこで初めて自分のこれまでの「人生」の展示に向きあいました。言葉にならないほどの感動。「生きているうちに来てしまっていいのだろうか、と思うような場所です」とTwitterでつぶやいています。
    すべての詩集と著書、映画6作品のポスター・チラシ・使いこんだ監督台本・スチール・撮影風景写真、年譜、主宰の雑誌。さらに1台のプロジェクターからは6作の予告篇、もう1台からは『パラダイス・ロスト』で使われた詩の朗読映像(朗読/林ヒロト、映像編集/高橋幾郎)が流れています。そして展示室の入り口には「福間健二展」の看板。
    その部屋は、まさに詩と映画が融合した「福間健二ワールド」となって存在しているのです! 圧巻です。
    会期が延長されたこともあって、この日は映画を見てくれた人たちがずいぶん足を運んでくれました。みなさんの感想を聞きながらお話しする機会を持てたのは何よりでした。そして来場してくれた人たちの、感想ツイートがたくさん出たことも、とてもうれしいことでした。
    札幌だけでなく各地から来場してくださったすべてのみなさんと、この展示を実現してくれた友人たちに、心からの感謝をおくります。

    福間健二展で流された朗読と映像

  • >> 記事一覧へ