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上映レポート

  • アップリンク吉祥寺 4月3日

    アップリンク吉祥寺での『パラダイス・ロスト』上映、4月3日(金)。この日から第3週に入りました。日ごとに新型コロナウイルスの影響が深刻化しているなかでも、お客さんに来てもらっていること、深く感謝いたします。

    福間監督による上映後のトークは、10分間だけとお断りして、はじまりました。
    『パラダイス・ロスト』の構想の出発点となった木下夕爾の詩「死の歌」と原民喜の短篇「心願の国」。福間監督は、撮影に使った「木下夕爾詩集」と原民喜の文庫本を手もとにおき、話題をそこにしぼって、話しました。「木下夕爾詩集」は、出版されているものではなく、本作のために美術部が特別に作ったものでした。

    「室野井洋子さんと首くくり栲象さん、敬愛する二人の身体表現者の死から、人が死ぬってどういうことなのか、とあらためて考えました。ただ受け身の、この世から消えていくことではない、そういう死が、木下夕爾の『死の歌』と原民喜の『心願の国』で語られている。その二つが重なるように語っていることを思い出したところから『パラダイス・ロスト』は動きだしたのです」。

    「死の歌」は、実は「生の歌」という詩と対になっています。「そこにもすばらしいイメージがある」と福間監督は言い、その最後の一節を読み、木下夕爾の言葉にある「死をのりこえて生きていく力」から受けとったものについて語りました。
    「死を、次の段階へのステップとしてとらえる。たぶん木下夕爾は、原民喜に触発されてそういう考え方に達したのではないかと、ぼくは推測しています」。

    「原民喜は、原爆の体験を書いた『夏の花』で有名になり、原爆作家と言われるわけですが、1930年代の初期作品ですでに、原爆のような恐ろしいことがこの世におこることを予感していた。そこから深い絶望とそれでも一方では希望を抱きながら生きて、1951年に中央線の、吉祥寺と西荻窪のあいだの線路に身を横たえて、命を断ちます。その場所から近いアップリンク吉祥寺で『パラダイス・ロスト』を上映している。なにか、感慨深いです」。

    原民喜が「心願の国」で語った夢。本作で二度にわたって慎也の声で流れる「人々の心の底に静かな泉が鳴りひびいて……」という箇所について、「その夢が、死をこえて、生きのびていく。それを受けとめたいと思いました」と福間監督は語りました。

    予感の作家であった原民喜。トーク終了後、福間監督は「ぼくの映画にもそういう予感があってくれたらいい」と呟いていました。
    先行きのわからない不安にみちたこの時期に対して、『パラダイス・ロスト』はどんな予感を語っているのでしょうか。
    上映、土日の休みのあと、さらに続きます。どうぞ、よろしくお願いします。
    (宣伝スタッフ 吉祥寺の娘)

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