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福間健二のページ

  • 『パラダイス・ロスト』に出てくる詩 05

    *福間健二作品 部分が出てくるもの(2)

    ブルームーン


    ブラックだらけ。社会の斜面。静かに降りていくだけでいいはずはない。やっと決断した人たち。長く使われていない小屋の裏の、勝手に育ったドクダミの白い花。遅まきでも痛点に迫る。抗議している。みんな、やめてほしい。自分より弱い動物を見つけて力をふるうのは。

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    「彼」は目配せだけで動かそうとする。いつか「彼」が動かされたように。そういうの、まだ効くのかな。ときには鈍感が方法になる。動き方ならネットでもわかる。中央線、青梅線、八高線。それぞれの、雰囲気のちがう「彼」の歴史。盗めってことだろうけど、盗まないよ。


    まだこんなにいる。男の子、虫の観察をするのが好きだ。まだこんなにある。人間関係とか、母親にため息をつかせるものにも少しは気づきながら北に向かっている。知らない。条約を知らない。まだこんなに。基地の風景がようやく尽きて、箱根ヶ崎駅。雨が降ってきた。


    休まない。朝、昼、晩。たとえば、アリたち。七里圭監督は言った。長いこと、ウンウンうなっていると、あ、これだとわかることがある。刻々と進化するって、何をおきざりにするのか。無料バスの出る場所がわからなくてタクシーに乗る。運転手は若い女性。とても親切だ。


    小さな住宅が窮屈そうに肩を寄せあって、微妙さの余地を残さない資本主義。なんでも入っている大きなモールのほかに店はない。このへんですよね。運転手さんは約束の千円でメーターを倒して行ったり来たりしてくれた。でも見すてられない。きみの虫たち、ぼくのカフカ。


    雨がつよくなるのと傘さした彼があらわれるのがほぼ同時だった。引っ越してきたままのような、あいていない箱がいくつも乱雑に置かれた部屋に案内される。ふと緩むものがあって鼻から息を吐くとぼくは彼になった。体を洗い、空腹をみたして眠り、目ざめて音楽を聴く。


    事件の記憶。はげしい雨と「泣かせてしまえばいい」。どの畑の、どの作物のことか。抜くべきもの抜いていない傷口。そうでなくても広さと明るさに驚かされるザ・モールみずほ16。金物道具市。マドラーを買った。三二〇円。ハイボール、ていねいに作りたい。


    ナベ、ザル、ボウル。ありふれた手口からの、三通りの自滅。雨に反射光を踊らせて、ザ・モールみずほ16からの無料バス。入間市駅と西友羽村店に行くのもあるが、先に来た箱根ヶ崎駅行きに乗る。八高線、青梅線、中央線。「彼」がいる。大丈夫、すてきな女性たちにも会う。


    新しい職場。入るとすぐに三人の社員が辞めていった。気になるけど、大文字小文字の区別がない世界。夜から夜へ、斜面から斜面へ、乾いてヒントになるものにお礼を言って、あまり大きすぎない空をもらった。月が出ている。青い月だ。叫びたい人、好きなだけ叫びなさい。

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    木星と金星もいる。前から気づいていたという顔で、足を休ませない。この癖、直らないなあ。でも、ある。よくケンカするおじさんとおばさんにもうひとり思春期以前の感性のしっかり者がいれば、なんとかなること。ブルームーン探偵社、休業中。再開の見込みはないらしい。

    〔ノート〕
    2018年5月19日から28日までに書いたツイート詩。1の「長く使われていない小屋の裏の、」からあとを、亀田くんと読みあうときの亜矢子の読む部分として。その前のところは、あとで夜の街の風景に慎也の声で流れる。もちろん、どちらも、慎也のノートの言葉だとしている。

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