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2020.1.15『パラダイス・ロスト』に出てくる詩 02
*福間健二作品 全篇が出てくるもの (1)
黒砂糖
夢で会う人
いつかほんとうに会えると思った。
オレンジ色の倉庫街
水たまりに何度も足を突っ込んで
おしりまで濡らしながらとっさの判断で
歩けない草たちを踏まないように膝を閉じて
屋根だけはりっぱな事務局
用事はなくても
休んでいきなさいと言われたけれどわたしは女生徒だ。
水島先生
人間という機械の奇怪さを
ここで説明すべきなのかどうか
修理の終わったばかりの楽園から
苦難の配給があっても
笑顔で終わる
よくできた一日を盗むと
おいしい砂糖がおまけで付いてきた。水島先生の故郷
南の島の黒糖
袋には黒砂糖と書いてある。
もうすぐなのかな。会ったら
この砂糖を使ったタレにつけこんだ
半熟卵のてんぷらだ。*
〔ノート〕
亜矢子(和田光沙)は、あひるの家でふたたび働くようになり、翔(我妻天湖)と体の関係をもち、絵もまた描きはじめたというところで、この詩を読む。ヒラカズ先生(森羅万象)の教え子だったもうひとりの佐々木ユキの書いた詩として。そこでは「水島先生」が「ヒラカズ先生」に変わっている。もともと「水島先生」はぼくが親しくつきあっている詩人水島英己である。ヒラカズ先生は、詩人水島英己のイメージからぼくが勝手に生みだした、この世をさまよう人なのだ。映画では、この詩のあとに、ずばり、ヒラカズ先生のつくった「砂糖を使ったタレにつけこんだ/半熟卵のてんぷら」が出てくる。「福間塾アンソロジー2019」(2019)に発表。 - >> 記事一覧へ